スキルス胃がんとは、発見が困難な難治性がんの一種です。進行スピードが非常に速く、診断時にはすでに腹膜播種や遠隔転移が起きているケースが少なくありません。
本記事では、スキルス胃がんの概要や通常の胃がんとの違い、主な症状・原因などを詳しく解説します。
何らかの症状がある方はもちろん、過去にヘリコバクター・ピロリ菌に感染していた方やスキルス胃がんの家族歴がある方は、ぜひ参考にしてください。
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スキルス胃がんとは?

スキルス胃がんとは、胃壁の広範囲に浸透し、硬く厚くさせながら進行する胃がんの一種です。
硬い腫瘍を意味するギリシャ語「skirrhos」が語源になっており、肉眼的分類では「4型」に該当します。
発症頻度は胃がん全体の7~15%程度ですが、一般的な胃がんに比べて早期発見が難しく、また、進行速度が速い傾向にあるため注意が必要です。※1
そのほか、若い世代や女性でも罹患する可能性や、腹膜に転移しやすいなどの特徴もあります。はじめに、スキルス胃がんの概要を紹介します。
通常の胃がんとの違い
通常の胃がんとスキルス胃がんの違いは、下記のとおりです。
通常の胃がん | スキルス胃がん | |
---|---|---|
タイプ | 分化型 | 未分化 |
発症部位 | 胃粘膜の表面 | 胃壁の内部 |
進行速度 | 比較的ゆっくり進行する | 非常に速い |
早期発見 | 可能 | 発見しにくい |
特徴 | 70歳以上の男性に多い | 若年層や女性も発症する |
通常の胃がんは、比較的ゆっくり進行する分化型と呼ばれるタイプが多いです。
胃の粘膜に腫瘍や隆起を形成するため、内視鏡検査やX線検査(バリウム検査)などで病変を見つけやすく、早期発見がしやすいといわれています。
女性に比べて男性の方が発症する割合が多く、罹患数のピークは70歳以上の高齢者です。
一方、スキルス胃がんの大半は、がん細胞の増殖スピードが速い未分化型です。
胃の粘膜表面ではなく、胃壁の内部に浸潤するように広がることから肉眼で捉えることが難しく、早期発見が容易ではありません。
通常の胃がんより女性の割合が多く、また、20~30歳代でも発症するケースが少なくありません。※2
スキルス胃がんの5年生存率
スキルス胃がんの5年生存率は、手術が可能な段階で発見されても15~20%です。※3
診断時にはすでにステージ4まで進行しているケースが多く、手術が困難な場合の5年生存率は7%未満ともいわれています。※4
スキルス胃がんは、早期発見が難しいうえに進行速度が速いため、通常の胃がんと比べて5年生存率は著しく低い傾向にあります。
スキルス胃がんの主な症状・原因

スキルス胃がんの大半は、初期の自覚症状がなく、進行に伴って胃の痛みや不快感などのさまざまな症状が現れます。
次章では、スキルス胃がんの主な症状・原因を紹介します。
気になる症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。
症状
スキルス胃がんの初期は無症状です。進行すると、下記の症状が現れます。
- 胃の痛みや不快感
- 吐き気・嘔吐
- 吐血・下血
- 血便・黒色便
がんにより胃壁が硬くなることで、胃やみぞおちに痛み・不快感が生じ、吐き気や嘔吐が出現します。また、食事がつかえる、体重が減るなどの症状も現れます。
胃壁の血管が破壊されたり、がんが潰瘍化したり、大量に出血すると吐血・下血、血便・黒色便がみられるほか、がんが腹膜に転移し腹水が溜まり、お腹の張りや息切れが伴うケースも少なくありません。
これらの症状はスキルス胃がんに限らず、通常の胃がんをはじめ、胃炎・胃潰瘍などでも現れます。気になる症状がある方は、できる限り早く消化器内科を受診しましょう。
原因
スキルス胃がんの原因には、下記が考えられています。
- ヘリコバクター・ピロリ菌
- 遺伝(家族歴)
ヘリコバクター・ピロリ菌はスキルス胃がんのリスクを高めることがわかっています。持続感染により引き起こされた慢性的な胃の炎症が、スキルス胃がんの発症につながります。
また、一部のスキルス胃がんは「遺伝性びまん性胃がん(HDGC)」と呼ばれる遺伝性疾患です。家族歴を有する場合、スキルス胃がんの発症リスクが高いといえます。
そのほか、下記は胃がん全体の原因になります。
- 喫煙
- 過度な飲酒
- 塩分が多い食生活
タバコは1.6倍、過度な飲酒は1.29倍、塩分濃度の高い食事は3倍ほど胃がんのリスクを高めます。※5※6※7
スキルス胃がんの検査方法

スキルス胃がんの検査方法は、下記のとおりです。
- 内視鏡検査
- X線検査(バリウム検査)
- エコー・CT・MRI検査
次章では、それぞれの検査の概要を詳しく解説します。
内視鏡検査
内視鏡検査とは、先端に小型カメラを内蔵したスコープを体内に挿入し、伝達された画像をモニターに映して観察する検査です。
スキルス胃がんは、粘膜の表面に発症しないため肉眼での病変の発見は困難ですが、胃粘膜のヒダの肥厚や、胃壁の硬さなどを胃内視鏡検査(胃カメラ)で確認できます。
また、検査時に空気を送り込んでも胃が膨らみにくい場合、所見がなくともスキルス胃がんが疑われます。
疑わしい病変がある際、組織を顕微鏡で詳しく調べる生検がおこなえる点も、内視鏡検査の強みです。
必要に応じて、深部の組織をピンポイントで採取するボーリング生検を検討します。
検査自体は5~10分ですが、生検の所要時間は1時間程度かかります。
胃を空にする必要があるため、前日は消化のよい食事を早めに済ませて当日は絶食です。
X線検査(バリウム検査)
X線検査(バリウム検査)は、造影剤(バリウム)と発泡剤を飲み、X線を照射しながら撮影する検査です。
胃全体の形・粘膜の状態を把握でき、胃壁の硬さや伸展不良の評価ができることから、スキルス胃がんの発見に有効といわれています。
しかし、X線検査のみでは確定診断に至りません。何らかの異常が確認された場合は、内視鏡による生検が必要です。また、バリウムによる腸閉塞や医療被ばくのリスクがあります。
所要時間は15分程度です。
エコー・CT・MRI検査
エコー・CT・MRI検査は、スキルス胃がんの進行度や転移の有無などを調べるためにおこないます。
エコー(超音波検査)では、胃壁の肥厚が抽出されることから、他の胃がんとの区別が可能です。また、リンパ節や肝臓への転移の有無が確認できます。
検査時の痛み・違和感はなく、所要時間は5~10分程度です。
CTの場合、肺・肝臓などの転移や腹水の有無が把握でき、治療方針の決定に役立ちます。
検査自体は10~20分程度ですが、造影剤(バリウム)を使用する場合は一時的に熱感や吐き気が生じるケースが少なくありません。
MRIとは、エコーやCTより詳細な組織画像が得られる精度が高い検査で、他の臓器や骨への転移の状態がより正確に把握できます。
検査の所要時間は30分程度ですが、体内に金属がある方は検査が受けられません。また、閉所恐怖症の方も他の検査方法を検討する必要があります。
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スキルス胃がんの治療方法

スキルス胃がんの治療方法は、がんの進行度や体の状態に応じて単独または複数の治療を組み合わせておこないます。
主な治療方法は、下記のとおりです。
- 外科手術
- 化学療法
- 放射線治療
次章で詳しく紹介します。
外科手術
がんが胃に留まっている場合、一般的な胃がんと同様に次の外科手術がおこなわれます。
- 幽門側胃切除術
- 噴門側胃切除術
- 幽門保存胃切除術
- 胃全摘術
幽門側胃切除術とは、胃の出口で十二指腸につながる部分の「幽門」を含む胃の約3分の2を切除する術式です。胃の入り口「噴門」にがんがある場合は、噴門側胃切除術を実施します。
がんが胃の中央部にあり、幽門から一定の距離がある場合、胃の機能が残せる幽門保存胃切除術が可能です。
胃の半分以上残すことが難しい進行がんに対しては、胃全摘術を実施します。
外科手術は、がんの進行度や発症部位、全身の状態などを総合的に判断し、開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット支援下腹腔鏡下手術などの方法でおこなわれます。
化学療法
化学療法とは、抗がん剤を用いてがん細胞の増殖を抑制して破壊に導く薬物療法の一つです。手術不能の進行がんやがんが再発した際に選択されます。
化学療法で使用する主な薬剤は、下記のとおりです。
- TS-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)
- シスプラチン
- 5-FU(フルオロウラシル)
- S-1(シルカリウム)
- カペシタビン
- オキサリプラチン
- パクリタキセル・ナブパクリタキセル
- ドセタキセル
- ラムシルマブ
- ニボルマブ
- イリノテカン
現在、スキルス胃がん特有の化学療法は確率されていないことから、一般的な胃がんに対する化学療法を実施します。
「化学療法未治療の腹膜播種を要する未分化型胃がん」では、TS-1とシスプラチンの併用(SP療法)が有効であるため、スキルス胃がんの治療に用いられるケースが多いです。
放射線治療
放射線治療は、一般的な胃がんと同じく補助的な治療として次の目的で実施されます。
- 切除率の向上
- 再発防止
- 症状の緩和
手術前に放射線治療をおこなうことで、がんを小さくして切除範囲を狭め、切除率を上げることが可能です。また、術後の再発防止にも役立ちます。
そのほか、がんによる痛みを和らげたり、進行を遅らせてQOLを維持したり、症状緩和を目的に放射線治療がおこなわれます。
マイクロCTC検査でスキルス胃がんを早期発見

マイクロCTC検査は、従来の検査で見落としがちなスキルス胃がんの早期発見に有用です。
血中に漏れ出したがん細胞を直接捉えることで、肉眼では見つけにくいタイプのがんや、画像に写らない部位のがんの発見につながります。
ここからは、マイクロCTC検査の魅力を紹介します。
早期発見・早期治療が重要
スキルス胃がんを含むすべてのがんは、早期に発見すれば根治が可能です。
一方、発見が遅れると治療における身体的・肉体的・経済的な負担が大きくなり、治療効果も低下します。
初期症状が現れにくいがんの早期発見には、定期的ながん検診が重要です。しかし、従来の検査では1cm未満の小さながんは見落とされることがあります。
マイクロCTC検査は、血中を循環するがん細胞そのものを捉えることから、サイズや発症部位にかかわらず、がんの検出が可能です。
また、米国「MDアンダーソンがんセンター」が開発した抗体を用いた独自の検査手法を導入しており、特異度94.45%を実現しています。※8
高精度なマイクロCTC検査を活用して、がんの早期発見・早期治療を目指しましょう。
検査は1回5分の採血のみで簡単
マイクロCTC検査は、1回5分の採血のみで簡単に自身のがんリスクがわかります。そのため、次の方におすすめです。
- 働き盛りのビジネスパーソン
- 家事・育児などで時間的余裕がない方
マイクロCTC検査は、血中のがん細胞そのものを捉える血液検査です。検査着への着替えをはじめ、事前の食事制限や薬剤の投与、安静待機時間などは一切必要ありません。
また、検査予約から結果確認までWebで完結する点も、マイクロCTC検査の魅力の一つです。
パソコンまたはスマートフォンから公式サイトにアクセスし、受診するクリニックと日時を選択後、問診表を記入すれば予約が確定します。
当日は身分証明書を持参のうえ、10分前に来院して受付を済ませ、医療機関の指示に従って検査を受けます。
検査結果は1週間~10日程度で確定し、マイページから確認が可能です。
全身のがんリスクも判定可能
マイクロCTC検査は、血中に漏れ出したがん細胞そのものを捕捉して1個単位で明示するため、全身のがんリスクが判明します。
従来の全身のがん検査には、下記のデメリットがありました。
- 時間がかかる
- 費用が高額になる
- 副作用や被ばくリスクがある
CT・MRI・PECなどの検査には、発見が不得意ながんがあり、複数の検査を組み合わせることから半日~1日の時間を要して費用も高額になります。
また、造影剤(バリウム)によるアレルギー反応やショック症状、放射性物質の検査薬(18F-FDG)による被ばくのリスクが伴います。
マイクロCTC検査の場合、5~10ml程度の採血した血液から全身のリスクが判明でき、体への負担は一切ありません。
万が一、がん細胞が検出されても、マイクロCTC検査のセンター長かつ代々木ウィルクリニックの太田医師に無料で相談できます。
スキルス胃がんに関するよくある質問

最後に、スキルス胃がんに関するよくある質問を紹介します。
スキルス胃がんに関する知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
発症率に男女差がある?
スキルス胃がんの発症率は、男性1に対して女性1.5の割合です。通常の胃がんの男女比(2:1)に比べると女性の方が発症しやすい傾向にあります。※9
また、スキルス胃がんの平均年齢は、女性で50歳、男性で58歳と60歳以下が大半を占めています。※10
スキルス胃がんになりやすい方とは?
スキルス胃がんの発症には、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染や遺伝子的要因などが深く関与していると考えられています。
次に該当する方は、スキルス胃がんのリスクが高いといえます。
- ヘリコバクター・ピロリ菌に感染したことがある方
- スキルス胃がんの家族歴がある方
- 胃がんや乳がんの家族歴・既存歴がある方
過去にヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療を受けた、あるいは現在治療中の方は、スキルス胃がんのリスクがあります。
また、両親や兄弟姉妹、祖父母などが、50歳未満でスキルス胃がんと診断された方は、遺伝性びまん性胃がん(HDGC)を発症する可能性が高いため、注意が必要です。
そして、遺伝性びまん性胃がんと診断された方のなかには、乳がん・前立腺がん・大腸がんなどの家族歴や既存歴があるケースが少なくありません。
スキルス胃がんは予防できる?
現在、スキルス胃がんの予防法は確立されていません。しかし、通常の胃がんの予防対策と同じく、下記が重要といえます。
- ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療
- 禁煙・節酒
- 塩分を控えて野菜・果物の摂取を心がけた食生活
また、高リスク群に分類される方は、とくに症状がなくとも定期的に検査を受けることが大切です。
まとめ

本記事では、スキルス胃がんの症状・原因・特徴を中心に解説しました。
スキルス胃がんは、初期の段階では症状が出にくく、また、内視鏡検査で発見が難しいといわれています。
通常の胃がんより進行速度が速く、気付かないうちにステージ4まで進んでいるケースが少なくありません。
早期発見が困難なスキルス胃がんを見つけるためには、マイクロCTC検査がおすすめです。
マイクロCTC検査は、増殖の過程で血中に漏れ出したがん細胞をキャッチし、全身のがんリスクを非常に早い段階で判定します。
肉眼で確認が難しいタイプのがんや、画像に写らない小さいがんの発見に役立ち、早期治療を可能にします。
〈参考サイト〉
※1、※3:がん情報サイト「オンコロ」|スキルス胃がんの基礎知識
※2、※9:札幌医科大学学術機関リポジトリ|スキルス胃癌の検討
※4:医療法人社団DAP 北青山Dクリニック|スキルス胃がんの余命について
※5:国立がん研究センター|がん対策研究所 喫煙と胃がんリスク
※6:国立がん研究センター|がん対策研究所 日本人における飲酒と胃がんリスク
※7:国立がん研究センター|がん対策研究所 食生活パターンと胃がんとの関連について
※8:マイクロCTC検査 | 血中のがん細胞を捕捉するがんリスク検査
※10:J-STAGE|胃集検発見スキルス胃癌について(秋田大学)