日本人で、男女ともによくみられるがんのひとつに大腸がんがあります。
大腸がんは2019年は1番、2021年では肺がんに次いで2番目に罹患率が高いがんです。
大腸がんは初期症状がないため、早期発見には大腸がん検診が重要です。
しかし大腸がん検診の受診率は、ほかのがん検診と同様に半数程しかありません。
本記事では大腸がんのリスクや検査方法、治療法を紹介し、少しでも早期発見できる方法をあわせて解説します。
大腸がん検診を控えた方、大腸がんのリスクが気になる方はぜひ参考ください。
大腸がんとは
大腸がんとは小腸に近い結腸や肛門に近い直腸に発生し、日本人ではとくにS状結腸や直腸にできやすいがんです。
がんのなかでも大腸がんは、男女ともに罹患率が高く、最新のがん統計では、がん罹患率は総数1位(2019年)、死亡率は女性で1位、総数2位で(2021年)です。
【2019年がん罹患率】
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
総数 | 大腸 | 肺 | 胃 | 乳房 | 前立腺 |
男性 | 前立腺 | 大腸 | 胃 | 肺 | 肝臓 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 |
【2021年がん死亡率】
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
総数 | 肺 | 大腸 | 胃 | すい臓 | 肝臓 |
男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | すい臓 | 肝臓 |
女性 | 大腸 | 肺 | すい臓 | 乳房 | 胃 |
大腸がんは50歳から年齢が上がるにつれ増加し、60歳で発症のピークを迎えます。
大腸がんは早期発見できると、内視鏡による外科的手術で治療が可能です。
ただし大腸がんには初期症状がなく、進行すると血便や下血、貧血、便秘などの症状がみられます。
さらにがんが進行すると腸閉塞を引き起こし、緊急処置が必要です。
大腸がんの早期発見につながる大腸がん検診は、40歳以上から1年に1回受けられ、問診と便潜血検査を実施します。
便潜血検査では目には見えない微量な出血を調べ、症状がでる前に大腸がんを見つけられます。
国立がん研究センターで公開されている大腸がんの5年生存率は、次のとおりです。
【結腸がん5年生存率】
5年生存率 | |
---|---|
ステージ0 | 93.0% |
ステージⅠ | 92.3% |
ステージⅡ | 85.4% |
ステージⅢa | 80.4% |
ステージⅢb | 63.8% |
ステージⅣ | 19.9% |
【直腸がん5年生存率】
5年生存率 | |
---|---|
ステージ0 | 97.6% |
ステージⅠ | 90.6% |
ステージⅡ | 83.1% |
ステージⅢa | 73.0% |
ステージⅢb | 53.5% |
ステージⅣ | 14.8% |
大腸がんはステージ0やステージⅠで発見できると5年生存率が90%以上あるため、がん検診による早期発見が重要です。
大腸がんの検査方法
ここでは大腸がんの検査方法として、次の内容を紹介します。
- 便潜血検査
- 直腸検査
- 注腸造影検査
- 大腸内視鏡検査
- CT検査・MRI検査
- PET検査
- 腫瘍マーカー検査
便潜血検査
大腸がん検診でもおこなう便潜血検査では、2日間分の便を採取し、大腸がんやポリープによる出血の有無を調べます。
2日分にわけて便を採取する理由は、大腸がんによる出血は間欠的で、毎日出血するとは限らないためです。
便潜血検査で、便に血が確認され「要精密検査」となった場合、主に大腸内視鏡検査をおこないます。
便潜血検査は他のがん検診に比べ、自宅で採取できるため身体的な負担が少なく、検査費用も安価です。
【例 大阪市】
費用 | |
---|---|
大腸がん検診 | 便潜血検査:300円 |
胃がん検診 | X線:500円 内視鏡:1,500円 |
肺がん検診 | 喀痰細胞診検査:400円 |
乳がん検診 | マンモグラフィ検査:1,500円 |
子宮頸がん検診 | 細胞診検査:400円 |
しかし便潜血検査は血に反応するため、痔や生理による出血も陽性となります。
そのため生理中は便潜血検査が受けられない自治体もあり、確認が必要です。
また持病に痔がある方が便潜血検査で陽性になった場合、「痔があるから陽性になった」と自己判断せず、精密検査を受けましょう。
直腸検査
大腸がん検査の直腸検査では、医師が肛門から直腸に向けて指を5cm程度のところまで押し込み、直腸内にあるしこりや腸の状態を直接触診します。
直腸検査は便潜血検査で陽性後、大腸がんの疑いがある場合におこなわれます。
注腸造影検査
注腸造影検査では大腸をX線で撮影し、がんの大きさ、位置などの把握が可能です。
注腸造影検査にかかる時間は20~30分程度であり、検査の流れは次のとおりです。
- 【検査前】事前に腸管内を綺麗にするため検査食、下剤を使用
- 検査5分前に筋肉注射をおこない、腸の動きを低下
- 肛門病変を観察
- 直腸にカテーテルを挿入
- バリウムと空気を注入し、検査時に見えやすいよう大腸を伸展
- バリウムが大腸の粘膜に付着するよう体位変換
- 検査終了時、腸内に溜まったガスやバリウムを排泄
- 検査後、トイレで排泄
ただし注腸造影検査は、腸管が重なるS状結腸や回盲部などの病変が見落とされやすいデメリットがあるため、現在、大腸がん検査の主流は大腸内視鏡検査です。
大腸内視鏡検査
直腸検査では肛門から5cm程度の直腸までの病変のみ検査が可能ですが、大腸内視鏡検査では、大腸全体を一度に調べられます。
大腸内視鏡検査にかかる時間は5時間程度であり、検査の流れは次のとおりです。
- 【検査前】事前に腸管内を綺麗にするため下剤を使用
- 検査当日の午前中に腸管洗浄液を飲み、腸管を洗浄
- 検査当日の午後から検査をおこなう(※腸管洗浄液を自宅で飲む場合もある)
- 横向きに寝た状態で内視鏡を肛門から一番奥の盲腸まで挿入
- 検査時にポリープがあった場合、内視鏡で切除可能であればその場で除去
検査自体は20~30分程で終了しますが、腸管洗浄液を飲む前処置が必要なため、全体の検査時間は朝から午後までかかるでしょう。
大腸内視鏡検査で大きなポリープやがんが見つかった場合はその場で切除できず、再度大腸内視鏡検査が必要になる場合があります。
また検査時には大腸に二酸化炭素を注入するため、検査後、お腹の張りがあります。
そのため検査後はすぐに食事をせず、お腹の張りがなくなるまで待ちましょう。
CT検査・MRI検査
CT検査やMRI検査では、内視鏡を挿入せずに大腸のなかを調べられるため、精神的にも身体的にも負担が少ない検査です。
CT検査ではX線を、MRI検査では磁気を使い、大腸内を観察します。
CT検査にかかる時間は5~10分程、MRI検査にかかる時間は15~45分程です。
CT検査、MRI検査の流れは次のとおりです。
【CT検査】
- 大腸の働きを抑えるために鎮痙剤を注射
- 肛門にチューブを挿入(※チューブの太さは鉛筆程度)
- 検査時に大腸が見えやすいよう炭酸ガスを注入
- 仰向けとうつ伏せの姿勢で撮影
【MRI検査】
- 検査時は装置のなかにある寝台に寝る
- 撮影中は、検査技師の指示のもと仰向け、うつ伏せ、手上げなど姿勢を変える
CT検査では下剤を使用しますが、従来の量の10分の1程度(200mL)であり、大腸内視鏡や注腸造影検査などの下剤に抵抗がある方におすすめです。
PET検査
PET検査は、静脈にFDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を注射し、がん細胞に取り込まれたFDG分布を画像に撮影する方法です。
がん細胞に取り込まれFDGには放射性があり、放射線を放出するため、身体の外から撮影できます。
放射線は人体組織を透過するため、身体の奥にあるがんでも検出が可能です。
PET検査にかかる時間は2~3時間であり、検査の流れは次のとおりです。
- 【検査前】4~6時間前から絶食する
- 検査当日、検査薬(放射性薬剤FDG)を注射する
- 検査まで1時間程度安静にする
- 撮影する
- 検査後、体内の放射線量が軽減するまで30分~1時間安静にする
PET検査はブドウ糖を使用するため、血糖値が高いと正常な検査結果が得られません。
そのため検査前は必ず絶食し、絶食中は糖分を含むスポーツドリンクや脂質を含む牛乳の摂取も避けましょう。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査は、採血または採尿のみで大腸がんを調べられます。
大腸がんの腫瘍マーカーはCEA、CA19-9を測定します。
ただし腫瘍マーカー検査のみではがんの位置やがんの有無を確定できず、診断の補助的な検査になるため、診断の確定には他の検査が必要です。
大腸がんの進行を把握するポイント
ここでは大腸がんの進行を把握するポイントとして次の内容を紹介します。
- 深達度(しんたつど)
- リンパ節への転移
- 他臓器への転移
深達度(しんたつど)
大腸がんは大腸壁の最も内側にある粘膜から発生し、進行するにつれてがん細胞が大腸壁へ入り込み、リンパ節や他臓器へ転移します。
大腸壁の構造は6層にわかれ、がん細胞が大腸壁の6層に浸潤する度合いを深達度といいます。深達度が高いほど、がん細胞が大腸壁の奥まで浸潤しているでしょう。
- 粘膜(大腸の内側)
- 粘膜筋板
- 粘膜下層
- 固有筋層
- 漿膜下層
- 漿膜(大腸の外側)
リンパ節への転移
大腸で発生したがんが、大腸壁を超えて浸潤したとき、がんはリンパ管をとおり、リンパ節へ転移します。
さらにリンパ節に転移したがん細胞は、リンパ液をとおり、離れたリンパ節へも転移が可能です。
がん細胞はリンパ管やリンパ液を移動手段として使い、がんの転移が起こります。
リンパ節転移は、大腸がんのステージⅢにあたり、ステージⅢを超えると5年生存率は半数程に低下するため注意が必要です。
他臓器への転移
大腸がんでは次の臓器への転移がよくみられます。
転移する割合 | |
---|---|
肺 | 10.9% |
肝臓 | 4.5% |
腹膜 | 2.4% |
他臓器への転移はがんの進行度が高く、がん細胞が血液をとおり、離れた場所でがんが発生します。
遠隔移転は大腸がんのステージⅣにあたり、ステージⅣの5年生存率は結腸がん19.9%で直腸がんで14.8%です。
大腸がんステージの分類(病期)
大腸がんステージの分類は主に5つにわかれます。
各ステージの詳細は次項を参考ください。
ステージ0
大腸がんのステージ0では、粘膜に発生した大腸がんが粘膜内でとどまる状態です。
ステージ0で発見できた場合、大腸内視鏡でがんの切除が可能です。
ただし大腸がんはステージ0~Ⅱでは自覚症状がありません。
ステージI
大腸がんのステージⅠでは、がんが粘膜の下層にあたる固有筋層でとどまる状態です。
ステージⅠでも粘膜層に近ければ、内視鏡での切除も可能ですが、浸潤が進んでいれば、手術が必要になる場合があります。
ステージⅠの5年生存率は92.3%であり、早期発見が重要です。
ステージII
大腸がんのステージⅡでは、固有筋層を超え、さらに下層にある漿膜周辺にがんが浸潤している状態です。
自覚症状はなく、自覚症状が出ていても痔と間違われるため、次の症状がある方は注意しましょう。
- 便秘や下痢を繰り返す
- 便が細い
- おなかが張る気がする
- 排出時に便が残る感じ
- 腹痛や貧血が気になる
- 原因がわからずに体重減少する
ステージⅡで大腸がんが見つかった場合、治療法は手術となり、リンパ節の切除が必要となります。
さらに再発や転移のリスクがあるため、術後は抗がん剤による治療がおこなわれます。
ステージⅢ
大腸がんのステージⅢでは大腸壁の深達度にかかわらず、リンパ節転移がみられるでしょう。
大腸がんでは、ステージⅢまでは内視鏡や手術などの外科的治療でがんの切除を目指します。
開腹せずお腹に穴を数か所空けて手術をおこなう腹腔鏡下手術は、身体の負担軽減が可能です。
ステージⅣ
大腸がんのステージⅣでは、他臓器への遠隔転移がみられます。
ステージⅣはがんが最も進行し、5年生存率もステージⅠでは92.3%に対し、ステージⅣでは18.3%まで下がるでしょう。
とくに肝臓や肺、腹膜によく転移が見られ、転移したがんの切除が可能かどうかで治療法が異なるため、次を参考ください。
大腸がん、転移したがんどちらも切除が可能 | 5年生存率が最も高い |
大腸がんは切除できるが、転移したがんは切除できない | 大腸がんは外科的手術で切除し、転移したがんは化学療法や放射線療法で治療 予後が悪く5年生存率も低下 |
大腸がん、転移したがんどちらも切除できない | 化学療法や放射線治療を実施 予後と5年生存率はさらに低下 |
治療方法
ここでは大腸がんの治療法として次の内容を紹介します。
- 初期は切除
- 大腸がんは抗がん剤が効きにくい
初期は切除
大腸がんはステージⅢまで、内視鏡や手術による外科的治療によるがんの切除を目指します。
ステージⅠまでの小さながんの場合のみ内視鏡での切除が可能です。
とくに内視鏡で切除できれば、開腹しないため身体への負担も少なく、回復も早いでしょう。
ステージⅡ以降では手術によるがん切除となり、がんが発生した腸管と周辺のリンパ節を切除し、残った腸管をつなぎあわせます。
ステージⅢまでは外科的治療を目指しますが、がんを切除できない場合、治療方法は化学療法や放射線治療に変わります。
大腸がんは抗がん剤が効きにくい
切除が困難な場合、化学療法や放射線治療をおこないますが、大腸がんは抗がん剤や放射線が効きにくいがんです。
そのため抗がん剤のみの治療はなく、外科療法・化学療法・放射線療法を組みあわせて治療します。
また手術までにがんを小さくしたり、手術後に散らばった小さいがんを死滅させたり、補助的な使い方で抗がん剤や放射線を使用します。
15年前までは切除できないがんを抗がん剤で治療した場合、余命が6か月程でした。
しかし近年では以前より抗がん剤に対する効果が上がり、現在余命は2~3年に延長されつつあります。
手術度の病理検査
大腸がんの手術では、手術度に病理検査をおこないます。
手術後、切除した大腸やリンパ節を生検して顕微鏡で調べ、がん細胞が見つかると最終的にステージが変更される可能性があるでしょう。
そのため手術前に診断した重症度を臨床分類ステージ、手術後に病理検査をおこない、最終的に診断された重症度を病理分類ステージといいます。
手術度の病理検査では、CT検査やMRI検査などよりも正確に「リンパ節へ転移しているか」がわかるでしょう。
大腸がんと遺伝について
ここでは大腸がんと遺伝について次の内容を紹介します。
- 大腸がんの70%は加齢や生活環境因子
- 遺伝性の大腸がんは5%
大腸がんの70%は加齢や生活環境因子
大腸がんはがんのなかでも男女問わず罹患率が高く、注意すべきがんのひとつです。
大腸がんのリスクは誰にでもあり、大腸がんの70%は加齢や生活環境因子が原因です。
生活環境因子とは運動不足や、高脂肪食、低線維食の摂取、飲酒、喫煙などが挙げられます。
大腸がんは加齢や生活環境因子の影響を受け、正常な大腸壁の粘膜細胞が遺伝子変異を起こし、がん化して発症すると考えられています。
大腸がんを予防するためには、次を参考ください。
- 定期的な運動を心がける
- 食物繊維を摂取する
- 過度なアルコールは控える
- 赤肉や加工肉は食べ過ぎない
遺伝性の大腸がんは5%
遺伝性のがんとは、がん自体が直接遺伝せず、遺伝子変異によりがんを発症しやすい体質が遺伝し、次のようながんを発症します。
【遺伝性腫瘍の病名】
発症するがん | 遺伝性腫瘍の病名 |
---|---|
大腸がん | リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん) 家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症) |
乳がん | 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群 |
骨軟部肉腫 | リー・フラウメニ症候群 |
皮膚がん | 遺伝性黒色腫 |
泌尿器がん | ウィルムス腫瘍(腎芽腫) 遺伝性乳頭状腎細胞がん |
脳腫瘍 | フォン・ヒッペル−リンドウ症候群 |
眼のがん | 網膜芽細胞腫 |
内分泌系の腫瘍 | 多発性内分泌腫瘍症(MEN)1型・2型 |
遺伝性大腸がんの場合、病名はリンチ症候群、家族性大腸ポリポーシスとなり、遺伝性大腸がんの割合は、大腸がん全体の5%程です。
遺伝性大腸がんの特徴は次のとおりです。
- 40歳未満で発症しやすい(通常の大腸がんは50歳以上から罹患者が増加)
- 大腸がんが繰り返し発症
- 一度に複数の大腸がんを発症
- がんが大腸以外でも複数か所で発生
- 大腸や胃、小腸に多数のポリープが発生
遺伝性大腸がんは高頻度で血縁者に発症するため、親や兄弟、親族で大腸がんを発症した方が多い場合、40歳を目安に早期から検査を受けましょう。
大腸がんの可能性には「マイクロCTC検査」
最後に、大腸がんの可能性を調べられるマイクロCTC検査について次の内容を紹介します。
- がんが怖いのは「浸潤」や「転移」
- 浸潤や転移とは
- 間葉系がん細胞とは
- 上皮性がん細胞と上皮間葉転換(EMT)
- マイクロCTC検査は「間葉系がん細胞」を捉える
がんが怖いのは「浸潤」や「転移」
がん細胞には種類があり、すべてのがん細胞が怖い訳ではありません。がんが怖いのは浸潤、転移する場合です。
がんは細胞分裂の際、遺伝子に傷がつき発生し、傷がついた遺伝子は突然変異するため、正常な働きができず、細胞自体のコントロールができなくなります。
コントロールを失った細胞はがん化して増殖しますが、自然消滅したり、自己免疫で攻撃されたり、なかには治療せずに消滅する悪性度の低いがんもあります。
一方、悪性度の高いがんもあり、悪性度の高いがんは浸潤・転移するため注意が必要です。
浸潤や転移とは
悪性度の高いがんは、浸潤・転移しやすいため気をつけなければなりません。
たとえば大腸がんの場合、がんの発症は大腸壁にある粘膜細胞の変異です。
粘膜内に発症したがんが、粘膜より下層にあたる固有筋層や漿膜にまで広がることを浸潤と言います。
一方、転移とはがんが発症した大腸壁のみでなく、がん細胞がリンパ液や血液に流れ出て、リンパ節や他臓器へ移動して発症するがんを示します。
浸潤・転移するとがんの重症度もあがり、5年生存率も低下するため注意が必要です。
大腸がんではステージⅠから粘膜よりひとつ下層の固有筋層に浸潤が見られ、ステージⅢではリンパ節転移、ステージⅣでは他臓器転移がみられます。
間葉系がん細胞とは
浸潤・転移しやすいがん細胞を間葉系がん細胞といいます。一方、浸潤・転移しないがんを上皮性がん細胞といい、両者の違いは次のとおりです。
上皮性がん細胞 | 間葉系がん細胞 | |
---|---|---|
悪性度 | 低い | 高い |
特徴 | 自然消滅する可能性がある 免疫攻撃で消滅しやすい 転移する可能性が低い | 高い運動能を持つためがんを浸潤・転移させる 転移する可能性が高い |
がんの種類 | 胃や肺などの一般的ながん | 胃や肺などの一般的ながん骨、筋肉などの肉腫 |
間葉系がん細胞は悪性度が高く、さらに高い運動能を持ちがんを浸潤し転移させるため、重症度が高くなり生存率にも影響を及ぼすでしょう。
がん細胞は上皮性がん細胞から発症し、上皮間葉転移を起こし、間葉系がん細胞に変異します。
上皮性がん細胞と上皮間葉転換(EMT)
上皮性がん細胞は上皮間葉転移を起こし、浸潤・転移しやすい間葉系がん細胞に変化します。
上皮間葉転移の流れは次のとおりです。
- 上皮性がん細胞が発生(細胞間で強固に接着)
- 上皮間葉転換で細胞間の接着が弱まる
- 上皮性がん細胞が間葉系がん細胞に形質変化
- 間葉系がん細胞は運動能を持つため周辺臓器にがんが転移
- 重症度を高め、生存率を低下させる
上皮間葉転移を起こすと、がん細胞間の接着を弱め、がん細胞は高い運動能を持ちます。
そのため間葉系がん細胞では、がんの浸潤や転移が起こり、がんを全身へと広げてしまうでしょう。
マイクロCTC検査は「間葉系がん細胞」を捉える
マイクロCTC検査は1回5分の採血のみで、体内の間葉系がん細胞を直接捉え、間葉系がん細胞が身体のどの部分にあるか見つけだし、全身のがんリスクを数値化できます。
さらにマイクロCTC検査では、CT検査やMRI検査など画像検査ではわからない小さな病変でも検出が可能です。
マイクロCTC検査では血液がん以外のがんを一度に調べられるため、検診に行く時間がない方にもおすすめです。
【マイクロCTC検査で調べられないがん】
- 白血病
- 悪性リンパ腫
- 多発性骨髄腫
- 上皮性がん細胞
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まとめ
記事では、大腸がんのリスクや検査方法、治療法を紹介し、少しでも早期発見できる方法を解説しました。
大腸がんは男女ともに罹患率が高く、誰しも注意が必要な疾患です。
大腸がんを調べるためには便潜血検査や大腸内視鏡検査などがありますが、採便したり、バリウムや下剤を飲んだり、検査方法に抵抗がある方もいるでしょう。
マイクロCTC検査では1回5分の採血のみで大腸がんを含む全身のがんを調べられ、画像検査ではわからない早期のがんも発見が可能です。
全国約150か所の医療機関で受けられるため、がん検診に行く時間がない、がんの早期発見を希望する方はぜひ参考ください。