がん検診はどのような方を対象にしている、がん検診の具体的なメリットをご存じですか。
健康な方や若い方はがん検診を受けるメリットを感じにくいのかもしれません。
しかし、自身はまだ大丈夫と考えていても、がんになる可能性はあるため、メリット・デメリットを理解して定期的ながん検診の受診が重要です。
本記事では、がん検診受診がとくにおすすめの方やがんの予防方法についてもあわせて解説します。
ぜひ参考にして、効果的にがんを予防しましょう。
採血でがん細胞を捕捉「マイクロCTC検査」
- 1cm未満の早期がん細胞も捕捉可能
- がん細胞を直接捕捉・個数まで提示
- 特異度94.45%の検査精度※2
事前準備 | 不要 |
医療被ばく | なし |
検査費用 | 198,000円 |
検査時間 | 1回5分 |
がん検診を受けるべきはこんな人
がん検診は一定の年齢を超えた方全員に受診が推奨されています。
なかでもとくにがん検診を受けるメリットが大きい方について解説します。
家族歴による危険因子がある
がんの家族歴がある、親や兄弟が何らかの部位のがんになったことがある方は、がんになるリスクが高いと結論付ける研究がいくつかあります。
家族として同じ生活環境で過ごす環境的側面と、遺伝子を引き継いでいる遺伝的側面の両方の影響です。
年齢や地域、喫煙、飲酒などほかの条件が結果に影響しないよう解析した結果を見てみましょう。
がん家族歴のない方と比べて、がん家族歴のある方では食道、胃、肝臓、膵臓、肺、子宮、膀胱のがん罹患リスクの上昇がみられました。
したがって、がん家族歴がある方は、後述するがん予防のための生活習慣の実践と、推奨されているがん検診受診がすすめられます。
そのほか、生まれ持った遺伝子の変化ががんの発症と強く関わるがんの種類があります。
遺伝性腫瘍(遺伝性のがん)です。
遺伝子が判明しているがんは次のとおりです。
原因遺伝子 | 病名 | 主な腫瘍 |
---|---|---|
APC | 家族性大腸腺腫症 | 大腸がん デスモイド腫瘍 |
BRCA1・BRCA2 | 遺伝性乳がん卵巣がん症候群 | 乳がん 卵巣がん 前立腺がん 膵臓がん |
MEN1 | 多発性内分泌腫瘍症1型 | 副甲状腺腫瘍 下垂体腫瘍 |
MLH1・MSH2・MSH6・PMS2 | リンチ症候群 | 大腸がん 子宮体がん 腎盂・尿管がん 卵巣がん 胃がん 小腸がん 膵がん 胆道がん 脳腫瘍 |
NF1 | 神経線維腫症1型 | 神経線維腫 神経鞘腫 |
PTEN | カウデン症候群 | 乳がん 甲状腺がん 子宮体がん 過誤腫 |
RB1 | 遺伝性網膜芽細胞腫 | 網膜芽細胞腫 骨肉腫 |
RET | 多発性内分泌腫瘍症2型 | 甲状腺髄様がん 褐色細胞腫 |
TP53 | リー・フラウメニ症候群 | 骨肉腫 乳がん 脳腫瘍 副腎皮質腫瘍 軟部肉腫 |
VHL | Von Hipple-Lindau症候群 | 腎細胞がん 褐色細胞腫 脳血管細胞腫 血管芽種 |
家族にがんになりやすいと判明している遺伝子を持つ方がいる場合、通常のがん検診のみでなく受診を検討したほうがよいでしょう。
遺伝性腫瘍の有無の調べ方、遺伝子検査は受けるか、検査結果の解釈、検査の結果は誰にどんな影響を及ぼすのか、など問題があります。
これらの問題を説明を聞いて理解し、よりよい自己決定をするため、遺伝カウンセリングの専門家への相談がおすすめです。
生活習慣による危険因子がある
がんには、生活習慣により発生の危険性が高まるがんがあります。
喫煙、飲酒、食生活、運動不足、太りすぎ痩せすぎ、感染などの要因です。
タバコの煙には発がん物質が含まれ、肺がんや口腔がん、喉頭がん、食道がん、腎臓がん、膀胱がんの発生リスクを大幅に上昇させます。
年齢もがんの危険因子で、がんの発症は加齢とともに増加します。
また、がんの種類により特定の危険因子が発生に大きく影響するがんもあります。
がんと関連する生活習慣の例は次のとおりです。
肺がん | 喫煙、化学物質(アスベスト) |
胃がん | 細菌(ピロリ菌)感染、喫煙、塩分の高い食品 |
大腸がん | 喫煙、飲酒、肥満、赤肉や加工肉 |
乳がん | 飲酒、肥満、女性ホルモン剤 |
子宮頸がん | ウイルス(ヒトパピローマウイルス)感染 |
これらの危険因子を持つ方はとくにがん検診受診が有用です。
関連記事
がん検診を受けるメリット
がん検診を受けると、いくつかのメリットがあります。
メリットを理解して、ぜひがん検診の受診を検討してください。
がんを早期発見できる
がんの早期発見は、がん検診を受ける目的であり、最大のメリットです。
早期発見できれば命を守れる可能性が高まるがんの検診が勧められているためです。
そのため、死亡率が減少する効果が認められているがん検診を推奨される頻度で受ける必要があります。
がんの早期発見は命を守るのみでなく、機能を温存したり、小さい侵襲で完全にがんを取りきったりできる治療の選択を可能にします。
がんになる前の病変を治療できる
がん検診では早期がんのみならず、がんになる前の段階の病変が見つかることもあります。
がんになる前段階の病変とは、具体的にはポリープや潰瘍、異型上皮などで、まだ悪性になっていない病変です。
病変が小さく治療の適応にならない場合は注意深く経過観察し、必要に応じて治療します。
がん検診より頻回に検査し、がんになる前に対処します。
異常がなければ安心できる
がん検診を受けて異常なしと判定されれば、次の定期健診まで安心して過ごせます。
定期検診は続けて受診する必要がありますが、検査を受けて安心できるのは大きなメリットでしょう。
がん検診を受けるデメリット
がん検診を受ける際には、メリットのみではなくデメリットもあります。
本章を読んで、デメリットもよく理解したうえで検診を受けましょう。
検査の精度は100%ではない
いかに優れた検査でも、100%の精度の検査はありません。
小さいがんや、見つけにくい部位のがん、見つけにくい形をしているがんは、検査を受けても見逃されてしまうこともあります。
誤って異常なしと判定される状態を偽陰性といいます。
偽陰性の割合は、がんの種類や検査により異なりますが、ゼロにはできません。
過剰診断される場合がある
検診で早期がんが見つかったときは、手術や治療をおこないますが、検診で見つかるがんの中には、微小で、そのまま観察のみ継続しても進行がんにはならないがんもあります。
生命に影響しないようながんだった場合、本来治療不要であった可能性があります。
これを過剰診断といいますが、現在のところ、過剰診断のがんと治療が必要ながんを、早期に見つかったときには区別できません。
また、がん検診でがんの疑いと判定されると、精密検査が必要です。
しかし、精密検査を受けた結果、がんではない場合もあり、偽陽性といいます。
偽陽性もゼロにはできません。
身体に負担のかかる検査がある
がん検診の検査の中には、身体に負担のかかる検査もあります。
X線検査で使用するバリウムの副作用や、内視鏡での出血、胃や腸に穴を開けてしまう穿孔、マンモグラフィー検査や内診など軽度の痛みや羞恥心を伴う検査などです。
X線を使用した検査では被曝の問題もあります。
合併症や副作用について説明を受け、理解したうえでの検査が必要です。
がん検診を受けるべき頻度・推奨年齢
がんは発見できるサイズに限界があり、小さすぎるがんは発見が困難です。
一方、発見できるサイズになってからできるだけ早く発見しなければ治療の機会を逃してしまいます。
早期発見、早期治療を可能にするため、厚生労働省は、各種検診ごとに受診間隔と対象年齢を推奨しています。
がんの種類ごとに解説するので、ぜひ参考にしてください。
胃がん検診【50歳以上】
胃がん検診の方法は胃部X線検査または胃内視鏡検査です。
厚生労働省の指針では、胃がん検診の推奨年齢は50歳以上ですが、胃部X線検査については40歳代で実施してもよい、とされています。
受診間隔は胃部X線検査および胃内視鏡検査について2年に1回が推奨です。
しかし、胃部X線検査に限り年に一度実施してもよい、としています。
肺がん検診【40歳以上】
肺がん検診の方法は胸部X線検査と喀痰細胞診を組み合わせた方法です。
肺がん検診が推奨される年齢は40歳以上で、毎年検診を受けることが推奨されています。
ただし、喀痰細胞診の対象者は50歳以上で喫煙指数が600以上の方です。
喫煙指数とは1日の喫煙本数×喫煙年数で計算されます。
大腸がん検診【40歳以上】
大腸がん検診の推奨年齢は40歳以上、毎年受診が推奨されます。
乳がん検診【40歳以上】
乳がん検診は40歳以上の女性に推奨され、2年に1回受診するとよいでしょう。
子宮頸がん検診【20歳以上】
子宮頸がん検診は20歳以上の女性に対し2年に1回の受診が推奨されています。
がん検診に関するよくある質問
がん検診のメリット・デメリットや、とくに受診を勧める方について解説してきました。
本章ではさらに踏み込んで、がん検診を受けるにあたりよくある質問について解説します。
-
がん検診の受診率はどのくらい?
-
現在、がん検診の受診率は決して高くありません。
政府はがん検診受診率50%以上を目標に受診率を向上させようと取り組みをしてきました。
しかし、2019年の調査では、がん検診の受診率は30〜40%台で、目標を達成できませんでした。
検診ごとの結果は次のとおりです。
受診率は、対象年齢の方が、2年に一度の検査であれば過去2年間、毎年の検査であれば過去1年間に検診を受けた割合として計算しています。
がん検診の種類 検診受診率 胃がん 44.7% 肺がん 45.8% 大腸がん 41.2% 乳がん 37.4% 子宮頸がん 35.8% がん検診の受診率が目標より低い状況を受けて、政府はがん検診の受診率目標を60%とさらに引き上げる計画です。
-
がん検診を受けるために必要な費用は?
-
がん検診を受けるには、いくつかの方法があります。
自治体で受診を推奨している検診や職場検診などの集団方式は自己負担額が安く、自治体により無料の地域もあります。
たとえば、子宮頸がん検診、乳がん検診の無料クーポンが配布されたり、生活保護世帯、市民税非課税世帯の方は無料でがん検診を受けられたりします。
また、各社会保険や企業の健康保険組合で集団検診を実施している例や、各自が医療機関でがん検診を受診した場合の補助金制度が設定されている例があります。
市区町村におけるがん検診の平均単価は次のとおりです。
検査の種類 検診単価 自己負担単価 胃がん検診(胃部X線検査) 7,103 1,505 胃がん検診(胃内視鏡検査) 14,005 3,116 肺がん検診(胸部X線検査) 2,483 527 肺がん検診
(胸部X線検査+喀痰細胞診)5,129 975 大腸がん検診 2,366 584 乳がん検診
(視触診+マンモグラフィー検査)7,471 1,619 子宮頸がん検診 6,752 1,396 ほかに人間ドックで医療機関を受診する方法もありますが、自治体の検診と比較すると高額です。
さまざまな検査がセットになり全身を調べられる施設もあります。
-
がんを防ぐためにできる対策は?
-
国立がん研究センターの研究グループがまとめた日本人のがん予防に重要な要因として、「日本人のためのがん予防法(5+1)」があります。
各要因は、禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重の維持、感染の6つです。
より具体的な方法として、公益財団法人がん研究振興財団が、「がんを防ぐための新12か条」を次のように定めています。
1条 たばこは吸わない
2条 他人のたばこの煙を避ける
3条 お酒はほどほどに
4条 バランスのとれた食生活を
5条 塩辛い食品は控えめに
6条 野菜や果物は不足にならないように
7条 適度に運動
8条 適切な体重維持
9条 ウイルスや細菌の感染予防と治療
10条 定期的ながん検診を
11条 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12条 正しいがん情報でがんを知ることから禁煙に関して、たばこは肺がん、食道がん、すい臓がん、胃がん、大腸がん、肝細胞がん、子宮頸がん、頭頸部がん、膀胱がんなど、多くのがんに関連します。
たばこを吸う方は吸わない方と比較して、何かのがんになるリスクが約1.5倍です。
受動喫煙でも肺がんや乳がんのリスクが上昇します。
飲酒に関しては、日本人男性を対象とした研究では1日あたりの平均アルコール摂取量が純エタノール量換算で23g未満の方と比較し、46g以上の場合で40%程度、69g以上で60%程度、がんになるリスクが高くなることが示されました。
肝細胞がん、食道がん、大腸がんと強い関連があり、乳がんのリスクも高くなります。
お酒を飲む場合は純エタノール量換算で1日あたり23g程度までがおすすめです。
量の目安は次のとおりです。
日本酒 1合 ビール大瓶(633ml) 1本 焼酎・泡盛 原液で1合の2/3 ウィスキー・ブランデー ダブル1杯 ワイン グラス2杯程度 食生活に関しては、塩分過多、野菜や果物不足、熱すぎる飲み物や食べ物が、がんの原因になることが明らかです。
日本人の食事摂取基準(厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)によると、食塩摂取量の目安は1日あたり男性は7.5g未満、女性は6.5g未満です。
野菜と果物の摂取に関して、厚生労働省から発表されている「健康日本21(第二次)」では、1日あたり野菜350gを摂取目標としています。
また、国立がん研究センターの研究報告によると、仕事や運動習慣により身体活動量が高い方ほど、何らかのがんになるリスクが低下していました。
適度な運動ががんの予防に効果的です。
とくに、男性では大腸がん、女性では乳がんで、身体活動量が高い方ほどリスクが低下すると報告されています。
厚生労働省は、健康づくりのための身体活動基準2013で、18歳から64歳の方の身体活動について、次の両方を満たすよう推奨しています。
- 歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分
- 息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分
65歳以上の高齢者は、身体活動を毎日40分おこなうことが推奨されています。
適正体重について、これまでの研究から、男性はBMI21.0~26.9、女性はBMI21.0~24.9の方ががん死亡のリスクが低いことが示されました。
BMI(Body Mass Index)とは肥満度を表す指標で、次の式で計算できます。
BMI値=(体重kg)/(身長m)2
太りすぎも痩せすぎもリスクが上がります。
感染に関して、日本人のがんの原因として気をつけるべき感染は次のとおりです。
ウイルス・細菌 がんの種類 B型・C型肝炎ウイルス 肝細胞がん ヘリコバクターピロリ菌 胃がん ヒトパピローマウイルス 子宮頸がん ヒトT細胞白血病ウイルス1型
(HTLV-1)成人T細胞白血病リンパ腫 感染すると必ずがんになるわけではありませんが、感染状況に応じた対応が必要です。
実際に、5つの生活習慣、すなわち禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重の維持に気を付けて生活すると、がんの予防効果が証明されています。
国立がん研究センターの研究では、5つの健康習慣を実践する方は、0または1つ実践する方と比較して、男性で43%、女性で37%がんになるリスクが低くなると推計されました。
予防効果が証明されている習慣をぜひ実践してみましょう。
まとめ
がん検診を受けるメリット・デメリットと、とくに受けるべき方について解説しました。
また、予防するために効果的な生活習慣やその効果について解説しています。
効果的にがんを予防し、早期発見早期治療をめざすことが重要です。
ぜひ参考にして、がん検診を受診しましょう。
<参考文献>
がん家族歴と、その後のがん罹患リスクとの関連について |国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト
遺伝性腫瘍・家族性腫瘍|がん情報サービス
がん検診のメリット・デメリット | 日本対がん協会 (jcancer.jp)
がん検診の目的とその利益(メリット)・不利益(デメリット)|とうきょう健康ステーション (tokyo.lg.jp)
がん検診のメリット・デメリット | 日本対がん協会 (jcancer.jp)
胃がん検診について|国立がん研究センター
がん検診について もっと詳しく|国立がん研究センター
肺がん検診について|国立がん研究センター
大腸がん検診について|国立がん研究センター
乳がん検診について|国立がん研究センター
子宮頸がん検診について|国立がん研究センター
政府、がん検診率目標を60%に引き上げ、がん検診受診の意義とは|misignal
科学的根拠に基づくがん予防|国立がん研究センター